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南房総・体験レポート

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鮮度の極み、船上活〆!

 鮮魚の名のとおり、魚の品質は鮮度が決め手。水揚げしたばかりの魚の鮮度をどこまで延ばせるかが鍵となる。鮮度保持の切り札『船上活〆』をブランド化した鴨川市漁業協同組合の定置網漁に同行してみた。

 『船上活〆』とは捕った魚を船上で一気に絶命させ、生臭くなる原因の血を抜いてしまう技法。魚は漁獲されると暴れるため、乳酸などの疲労物質が蓄積して味が落ち、死後硬直も始まりどんどん鮮度が劣化していく。網で引き上げたばかりの魚を港に着く前に即殺・脱血する『船上活〆』は、鮮度の劣化スピードを抑制する効果が非常に高い。しかしながら漁をしながら魚を1 匹1匹選別し、活〆するのは大変な手間である。鮮度保持の効果を知っていてもそうそう実践できるものではない。
 鴨川漁協では、「鴨川産の魚を最も美味しい状態で食べてもらいたい」という乗組員たちの強い思いから、平成19年より定置網漁で『船上活〆』を行っている。魚種は、サバ、アジ、ヒラマサ、サワラ、ブリなど約20種。ひと手間もふた手間もかかっているが故に味も品質も高く、仲買人や料理人から評価され、すでに築地市場では付加価値の高いブランドとして高値で取引されている。
 定置網漁の漁船に乗せてもらえる機会を得たので、水揚げ直後に船上で活〆する現場の様子を紹介しよう。

鴨川市中心部の広さに匹敵?深く巨大な定置網

 さて、まず鴨川漁協が行っている定置網漁について簡単に触れてみたい。
 定置網漁は、魚が障害物に沿って泳ぐ習性を利用した漁法で、潮の流れなどを予測して網を海中に設置し、魚を誘い込んで捕獲するもの。大型の漁船で魚を追いかけて根こそぎ獲る漁法とは違い、回遊する魚を待つ漁なので過剰漁獲にならず、海洋資源の大切さが見直されている現在、環境に優しい漁業としても脚光を浴びている。
 陸から5qほど離れた海中に仕掛けてある鴨川漁協の定置網の大きさは想像を超えるもので、水深60m、横幅はなんと1,830mにも及ぶ。沿岸を回遊する魚の行き手をさえぎる直線に伸びた道網と、網に沿って誘導された魚が入る登り運動場と箱網で構成され、その面積は鴨川市街の中心部をほぼ覆ってしまうほど広い。
 定置網漁の出港は、東の空が白み始める前。19トンの漁船2艘と2トンの漁船1艘の計3艘で漁場へ向かう。大量の氷を積み込み出港準備が整うと、船はディーゼルエンジンの低くこもった音を響かせながら入り江を離れ外洋へ。朝陽が昇る東の海へ進路を向ける。前原海岸に立ち並ぶリゾートマンションやホテルがどんどん小さくなり、精巧なジオラマ模型のように見えてくる。

 鴨川漁港から30 分ほどで漁場に到着すると、漁師たちは各自の持ち場に付き定置網漁が開始される。
 19トンの漁船2艘が海中に仕掛けた箱網の左右に並び、その間を2トンの小さな漁船が往き来しながら箱網にロープをかけ、左右の漁船に渡していく。箱網をロープで巻き上げていくにつれ、30mほど離れていた2艘の船の距離が徐々に縮まり、飛び移れるくらいまで近づくと、網のなかで飛び跳ねる魚が見えてくる。この作業は網起こしと呼ばれるもので、魚を逃がさないように網の引き上げは慎重の上に慎重を期して行われる。
 魚はクレーンに取り付けられた大きなタモで水揚げされ、船上は瞬く間に飛び跳ねる魚で埋め尽くされる。イワシ、アジ、サバ、ヒラメ、ホウボウ、タイ、イカなど数十数種もの魚を次から次へと仕分ける漁師たち。活け〆用に選別された魚は担当者に渡され、1匹1匹その場で即殺。血抜きをし、氷水の水槽に入れる。

 船上での作業は、「板子一枚下は地獄」と言われるように一瞬の気の緩みが事故につながる。漁師たちは真剣な表情で手際よく持ち場の仕事をこなし、1時間ほどで網起こし作業を完了。未明にスタートした定置網漁も、終わる頃には朝陽が昇り、あたり一面がきらめきに包まれていた。
 網の汚れや付着物を洗い流しながら元の位置に箱網を戻し、港へ向けてエンジンを始動。船上に広がる一仕事終えた安堵と達成感。朝陽を浴びて輝く海に漁船のエンジン音が軽やかに響きわたる。

ハイリスクに挑む、鴨川漁師のチャレンジ魂

 定置網漁の魅力は、漁場が沿岸付近に固定されており、海が時化ていなければ毎朝新鮮な魚を捕獲できる点である。鴨川では大正5年に定置網漁が始まり、約100年の歴史を重ねてきた。
 鴨川沖の海は潮の流れが速く、実のところ定置網漁に適しているとは言い難い。網も傷みやすく点検やメンテナンスにとても手間がかかるそうだ。そんなリスクはあるものの、鴨川沖は黒潮に乗って多種多彩な魚がやってくる恵まれた漁場。予想以上の大群が網に入ったり、マグロなどの大物が獲れることもあり、ハイリターンも期待できる。定置網漁のおかげで、鴨川漁港の魚市場には何十種にもおよぶ魚介類が安定して水揚げされている。
 鴨川産のおいしい魚をよりおいしく食卓で味わってもらいたい。鮮魚の付加価値を上げ鴨川産ブランドを高めたい。そのためにはどんな労も厭わない鴨川の漁師たち。ハイリスクな鴨川沖で定置網漁を続けてきたチャレンジ魂は、魚の鮮度を飛躍的に伸ばす『鴨川鮮魚・船上活〆』にも強く息づいている。

味、色、食感、違い歴然!鮮度が持続する『船上活〆』

 『船上活〆』の効果を実感できる魚としてまず挙げたいのは、サバ。傷みの早い魚の代表格だが、船上で首を折り脱血したサバは身の色が保たれ、酢締めにしても刺身のようなモチモチっとした食感が味わえる。築地市場で『鴨川産・船上活〆のサバ』を指名買いする寿司店も多いそうだ。
 活〆したアジも効果てきめん。身の締まりが良くプリップリッの食感が楽しめるだけでなく、身の色が透き通るほど透明になり、まるで高級魚!庶民派のアジが大変身する。
 ヒラメ、ホウボウ、タイなど正真正銘の高級魚は、旨みを引き出すために熟成させると美味しさ倍増。身の弾力と脂がバランス良く溶け合って、まったりと奥行きのある見事な味わい。口中に広がる香りがとても上品で余韻も楽しめる。
 ブリやカンパチなどの青物は、時間と共に血合いが黒ずみ劣化していくが、しっかりと脱血した『船上活〆』なら、血生臭くなることもなく鮮度が長持ちする。毛細血管の中に血が残っていないので身の色が変色せず、刺身にした時の見栄えも美しい。
 『鴨川鮮魚・船上活〆』の多くは、都内の料理店や築地市場へ出荷されているが、鴨川市内の鮮魚店でも購入できる。
 美味しい魚をさらに上級な逸品にする『船上活〆』。その真価を、ぜひご自身の舌で確かめていただきたい。

鴨川鮮魚船上活〆取扱店

都内の料理人から引く手あまたの『船上活〆』。
地元に流通する量が少ないため、どこでも気軽に買える魚ではない。
『船上活〆』を鴨川漁港から直接仕入れている鮮魚店を紹介しよう。

【いずみや鮮魚店】

Tel.04-7092-3101 ■住所/鴨川市貝渚3202 ■営業時間/7時〜17時 ※刺身盛合せの予約は14時迄 ■休業日/第1日曜日(定休)

漁港直接仕入れの鮮度、魚の旨味を活かす専門店ならではの包丁さばき。

 昭和24 年の創業以来、「鴨川港」のお膝元で魚の販売・卸しを手掛けてきた「いずみや鮮魚店」。ホテル・旅館・市場などへの卸しでは、長年の取引で強固な信頼関係を築き、高級魚や大口の注文も電話一本で受けているという。
 店頭販売にも力を入れており、お好みに合わせて[刺身のお造り]や[活き造り盛り合わせ]などの調理もしてくれる。熟練したスタッフの見事な包丁さばきで、地魚の旨味を余すことなく引き出してくれるとは有り難い。しかも調理場がオープンスタイルなので、スタッフの包丁さばきを間近で見ながら魚の美味しい食べ方を聞くこともできる。
 「港に揚がりたてのイカは、イカソーメンにして卵醤油を絡めて食べると美味しいよ」。
 「血抜きしてある活〆のタイは、熟成させた刺身が最高。血生臭さがなく、凝縮された旨味とマッタリした食感は最高!」。
 鮮魚のプロとざっくばらんに話ができる点も専門店ならではの魅力だ。
 また「いずみや鮮魚店」は、房州全域の港から新鮮な魚を仕入れているため、地元では『何でもそろう店』と評判。多種多彩なリクエストに応えてくれる。

【庄司鮮魚店】

Tel.04-7092-0784 ■住所/鴨川市横渚1114 ■営業時間/9時〜17時 ■休業日/水曜日(定休)

鴨川近海の地魚を知り尽くす、鮮魚の達人の確かな目利き。

 「安房鴨川」駅東口の駅前通りで50 年以上にわたって鮮魚店を営んでいる「庄司鮮魚店」。毎朝、社長の庄司正明さんと若主人の正幸さんが「鴨川港」に通い、長年の経験に培われた確かな目利きで、その日の最良の魚を仕入れている。
 定置網漁など近海の地魚を水揚げしている「鴨川港」は魚種が豊富で、多種多彩な魚の良し悪しを見極める技能が必要だ。地元鴨川で鍛えられた庄司さんの目利きは鋭く、高品質な魚を求める地魚料理店や美食家から信頼を集め、古くからの顧客が多いそうだ。
 鴨川の漁業の発展を願う気持ちも強く、鴨川産ブランドの品質と味の良さを積極的にアピールしている。特にウマズラハギの船上活〆は、本家のカワハギを凌ぐほど美味いと庄司さんが胸を張る。船上活〆は時化で漁が行われないと仕入れられないため、前日に電話で様子を聞いておくと、間違いがない。

【カネシチ水産・魚屋食堂】

Tel.04-7096-0134 ■住所/鴨川市 江見東真門166 ■営業時間/9時〜19時 ■休業日/火曜日(祝日営業)
[姉妹店]魚屋食堂勝浦 TEL.0470-77-0016 ■住所/勝浦市杉戸1459-1 ■営業時間/11時〜19時 ■休業日/火曜日(祝日営業)

入札権・漁業権がある強みを活かした、その名もズバリ、魚屋食堂!

 国道128 号線を「ミレーニア勝浦」から館山方面へ約27 キロ。鴨川市江見にある「カネシチ水産」は、食堂・宴会場・入浴・宿泊施設を完備する大規模鮮魚店。地元鴨川で水揚げされた魚をもっと美味しく、もっと楽しく味わってもらうために、多彩な施設が併設されている。
 「魚屋食堂」というストレートなネーミングのとおり、魚屋の入札権・漁業権をフルに活かし、地元「鴨川港」や「江見港」で直接仕入れた旬の地魚を最も美味しく調理して食堂で提供している。
 鴨川産の船上活〆は、サバ、アジ、ヒラマサ、サワラなど様々な魚種を積極的に仕入れ、小売り、食堂メニュー共にかなりの充実ぶり。活〆した魚を刺身にしてタレ漬けにした真空パック「まご茶」シリーズなど調理済のオリジナル商品も開発販売している。
 また今春、姉妹店「魚屋食堂/勝浦」が国道297 号線沿いにオープン。鴨川産・船上活〆が勝浦市内でも楽しめるようになった。

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