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南房総・体験レポート

南房総・体験レポート

勝浦→大原 スクーターお気軽道中
さすらい海岸通り

 南房総の海岸沿いは、砂浜あり、岬あり、断崖絶壁あり、変化に富んだ景観が次から次へと現れる最高のビューロケーション。しかしながら道が狭くて入り組んでいる場所もあり、見落としているスポットがあるかもしれない。勝浦〜御宿〜大原を、小回りの効くスクーターで散策してみた。

肌で感じる海辺の暮らし

 岬めぐり、海岸通り…、昔から海辺をテーマにする歌がたくさんあるように、シーサイドは、いつの時代もドラマチック。青い海と緑の岬が織りなす風景の中を走っていると、まるで自分が歌の主人公になったかのような気分になる、そんな経験ありませんか。
 『ミレーニア勝浦』から勝浦市街へ向かう旧道沿いには、日本の渚百選に選ばれた守谷海岸や断崖絶壁の岬が連なる鵜原理想郷など映画の舞台のようなロケーションが広がり、眺めているだけで心が晴れわたる。
 このまま海岸沿いを車で走り続けたら、魅力的なビュースポットがもっとあるかもしれない。
 鵜原、尾名浦、松部、串浜へ進み勝浦漁港に行き着くと、その先は八幡岬へ向かう狭く曲がりくねった上り坂。残念ながら風景を楽しみながらゆったりドライブできるような道ではない。そこで思い浮かんだのが細い道でもスイスイ走れるスクーター。クルマで向かうのを躊躇するような細い道の先の先へと進み、シーサイドの魅力を再発見できるはず。

 今回のコースは、勝浦漁港からスタートし、八幡岬、勝浦灯台を巡り、川津、豊浜の集落を抜け、御宿経由で大原へ向かうショートトリップ。スクーターの機動力を活かし、できるだけ海沿いを走りながら、気になる風景やお店を見つけたら気軽に停まる寄り道道中だ。
 朝の水揚げで賑わう勝浦漁港を背にトンネルを抜け、八幡岬へ向かう坂道を上っていくと、ほんの数分で右手の視界が一気に広がり、勝浦湾を一望できる高台へ出る。出発したばかりで停まるのも何だが、通り過ぎるのがもったいないダイナミックな眺望。さっきまでいた勝浦漁港がミニチュアのように見えるのが面白い。

 T字路を右に曲がった先にあるのが勝浦城址に広がる八幡岬公園。後に徳川家康の側室となるお万の方(水戸光圀の祖母)が、焼け落ちる勝浦城から高さ40mの断崖に白い布を垂らして海に下り、小舟で逃れたという「お万の布さらし」伝説が有名だ。視界を阻むものが何もない眼前180度の大パノラマ。太平洋の大海原が果てしなく広がっている。
 八幡岬から勝浦灯台、官軍塚へ、岬の尾根に沿って道は延び、カーブが連続する尾根沿いの道をゆっくり進む。断崖絶壁を見下ろすビュースポットが点在しており、サッと路肩に停めて風景に見入ることができる。スクーターは便利この上ないことを実感した。

海と向かい合う和菓子店

 海沿いの集落・川津へ向かって下りて行くと、道幅はさらに狭まる。クルマのすれ違いができないほどだが、スクーターだとスイスイ気持ちよく走れる。歩くような速度で家々の合間を抜けていくと、港町の生活感が肌で感じられる。
 潮の香りと共に海が近づき、川津港に出た。朝の漁を終えて戻ってきたのか、岸壁に何艘もの漁船が寄り添うように停泊している。

 海に迫る山の際を縫うように走り豊浜小学校の前に出ると、右前方に新官(しんが)港が現れる。防波堤が一直線に伸び、その先端には小さな白灯台が建っている。なかなか旅情をそそる風景だ。防波堤の上に釣り人がポツンポツンと見えたので、「何が釣れるのかなぁ」などと考えながら走っていると、道沿いに和菓子店がふっと現れた。あまりにも周りの家並に溶け込んでいたので見落としてしまうところだった。こんな海に面した所にあるとは珍しい。日本で一番海に近い和菓子店≠ゥもしれない。

 興味津々で店内に入ると、餡子たっぷりの団子や艶やかなみたらし団子などがガラスケースに所狭しと並んでいた。
 見るからに滑らかなこし餡に包まれた団子を一本買い、海を眺めながら食べてみたところ、なんというきめ細かさ。餡のとろけるような口溶けを味わいつつ団子を噛むと、弾力のあるもっちりとした食感が待っている。甘さ控えめで小豆の風味が優しい上品な味わいだ。
 この和菓子店は『玉子屋製菓店』といい、六十年以上の長きにわたり、地元で愛され続けている老舗。毎朝暗いうちから小豆を茹で、餅米を蒸し、全ての和菓子を手作りしているという。
 海の真ん前にあるロケーションにも驚いたが、手作りだからこその気取りのない美味しさに、さらに驚かされた。
 他の和菓子も魅力的で、もう一度店内に戻り、草餅、どら焼き、鹿の子、みたらし団子を買ってお土産にした。

取材協力

和菓子・玉子屋製菓店
問い合せ先/.0470-73-0439 千葉県勝浦市新官164 
営業時間/7:00〜18:30(年中無休)

御宿に吹く異国の風

 部原から国道128号線と合流し、トンネルを三つ抜けて御宿町へ。御宿漁港交差点を右折し、リゾートホテルが建ち並ぶ御宿海水浴場沿いを走り、『月の沙漠記念館』前を通り、岩和田海水浴場へ向かう。
 白い砂浜の向こうに広がる青い海。海風になびくワシントン椰子。タイルを敷き詰めたアヴェニュー。ビーチサイドの風景は、まるでワイキキ…いやいや御宿町の姉妹都市メキシコ・アカプルコ?大きく視界が広がる海岸沿いをスクーターで軽く流しているだけで気持ちいい。
 道は、岩和田海水浴場を過ぎると上り坂となり、景色が海辺から山間へと変わる。道幅が広く見通しも良いので、そよ風のようにふわ〜りと走って行ける。

 緑の中を爽快に走っていくと、森の景観に似つかわしくない無機質な建物が忽然と現れる。『海洋生物環境研究所中央研究所』という施設で、そのすぐ横に『ドン・ロドリゴ上陸地』の看板が立っていた。
 ご存じの方も多いと思うが、ドン・ロドリゴ上陸地とは、1609年に田尻浜で沈没したイスパニア(スペイン)船サン・フランシスコ号のドン・ロドリゴ総督をはじめとする乗組員が漂着した海岸。岩和田の住民たちは、浜辺に命からがらたどりついた異国人たちを懸命に救助し、破れた服を着た裸同然の人々が転がる悲惨な状況を見かねて、大切な着物や食べ物を分け与えたという。当時の岩和田の人口は300人程度で、救助された人は317人。漁村の暮らしは貧しかったが、集落の住民を上回る人数の異国人を救うため、我が身を顧みずに介抱したと記録されている。同じ海で生きる者同士、国は違えども心は家族同然だったのかもしれない。

船が岩と化した岩船地蔵尊

 雑木林と畑が混在する里山風景の中をしばらく走り、『岩船地蔵尊』への道標に従って右折。進むほどに山深くなり、樹林帯に包まれた道の先で暗いトンネルが待ち受けている。人家も消え、スクーター一台で走っていると「どこの山奥に迷い込んでしまったのか」と心細くなってくる。
 ようやく前方に人家が見えてきた。山間の閉じた視界がぱぁっと開け、限りなく開放的な太平洋が現れる。山と海が瞬間的に切り替わるこのギャップは、とても新鮮だ。

 海岸沿いを走っていくと、白波が立つ大海原にせり出すように建つ朱塗りのお堂が見えてくる。1275年建立と伝えられる『 岩船地蔵尊』だ。
 縁起によると、《今からおよそ700年前、時の中納言・藤原兼貞卿が東国の衆生済度(しゅじょうさいど)のため、大和国飛鳥(やまとのくにあすか)の里『春日の宮』に安置されていた御本尊と七十五座の神々を船に乗せ房総半島沖を航海中、台風に遭い漂流。一同船中で尊像を一心に念じたところ、しばらくして小千谷村に漂着することが出来た。朝になり風雨が静まると、船は大きな岩と化して海上に浮かび、尊像安置を示唆する霊岩が同時に現われたため、藤原兼貞卿は里人と相談し、ここにお堂を建て御本尊をお祀りした》とある。この時から小千谷村は、岩が船と化したことに由来し岩船村と呼ばれ、以来、海上安全・五穀豊穣・諸願成就の守り本尊として地元の人々の厚い信仰を集めてきたという。
 海上遭難を救い、船を岩と化し霊岩をもたらす…。これほどのパワースポットが外房にあったとは知らなかった。寄せては返す波音の中、お堂の前で手を合わせ、700年前の超常現象?に思いを馳せてみた。

真実一路、大原へ

 さてここまでの道中、予想以上にディープな場所が多く寄り道に時間を費やしてしまった。とことん海沿いの道を辿るつもりだったが、仕方なく予定変更。陽が西へ傾く前に大原に着けるよう、最短ルートで向かうことにした。
 海を後に、再び山間へスクーターを走らせる。トンネルを抜け、素朴な田園風景の中を走り、国道128号線に合流。直線的に伸びる国道を車の流れに乗って走り、ほどなく大原漁港に到着した。

 大原漁港は、海の間近に山が迫っている勝浦の漁港とは違い、平地にあるので広々としている。釣り船の看板も多く、船溜まりには大小様々な船が停泊していた。
 着いたのが夕刻だったせいか人影もまばら。静かな漁港の建物に貼られたポスターに目がとまった。それは毎週日曜日に開催されている『大原漁港・港の朝市』のポスターで、地タコや伊勢エビ、買ったばかりの海産物を炭火で焼いて食べられるBBQコーナーの情報が記されていた。日本三大朝市の町・勝浦から来た者として、これは見過ごせない。日曜の朝出直して来ることにして、大原漁港を後にした。

 そして今回の小旅行の締めくくりにふさわしいスポットがどこか近くにないものかと探していると、塩田川のほとりで小説家・山本有三の『真実一路の碑』を発見。碑文には「海面に夕もやがおりかけて水も空も一ようにネズミ色に染まって行った…」と記されており、まさに夕暮れ間近の今この時と被っている。これも何かの縁と、一路、海辺の小道を探った小旅行を、『真実一路の碑』で終えることにした。
 太平洋側に断崖絶壁が切り立つ外房は、海辺であっても山あり谷あり。『ミレーニア勝浦』から大原漁港まで30qに満たない距離だが、小回りの効くスクーターだと密度の濃い旅が楽しめる。次はどこへ行こうか、さすらい心が加速する。

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